銀行は、理想(頭取)と現実(行員)のギャップが大きい職場です。銀行員の慣習をリセットして、将来キャリアを考え直すきっかけにしてください。
30代で社畜になる人生
20代の銀行員が組織に対して抱いているモヤモヤ。
- 面白くない仕事
- 理不尽な社内ルール
- 給料もたいして良くない
- 上が詰まっていて昇進チャンスは少ない
それが30歳を超えると少し変わってくる。
- 絶対服従すべき上司が見つかる
- 稟議を通す為に媚びる術を覚える
- 顧客の為より、銀行の為の融資をする
20代の頃に感じていた組織への違和感を克服すると、人間味を失なってしまう。 世間一般とズレが大きい業界では、こうして自分を押し殺さなければやっていけない。
果樹園で独立起業した元銀行員
元メガバンク行員が果樹農園を開業した。話を聞く機会があったので、ここで彼の職業観を紹介します。
彼は国立大学を卒業後、6年間銀行員として勤務。同期より一足早く出世し、社内の評価は抜群。ところが、本人の労働意欲は年々衰えていったそうです。
特に彼の心を蝕んでいったのは、納得できない銀行特有ルール。
- 非効率で膨大な仕事時間
- 仕事の為の仕事
- 書類の為の書類
お客様の為にならない労働を機械的にこなしているうちに心がポキッと折れてしまった。
仕事が嫌いなわけではない。 むしろ労働意欲は高かった。 でも銀行の仕事に熱中するのは無理だった。 「もっと人間的な仕事がしたい」そう強く感じ、異分野への活路を求めて農業大学校へ通った。
現在の彼は、果樹園の管理だけでなく、受発注業務から販路開拓まで一人でこなしている。
近隣農家を巻き込んで、規格外品を集めた加工品工場の立ち上げプロジェクトも始まった。 市場へ出荷できない作物をゼリーやジャムへ加工したり、ペースト状にして化粧品会社へ売り込むことを計画している。
日の出~24時まで働き詰め。銀行員時代より忙しい。現にこのインタビューも倉庫まで商品を運ぶ軽トラに同席させてもらって実現した。それでも疲れてない。むしろハツラツとしている。
銀行員を辞めて3年が経過し、「自分の仕事に誇りを持てれば、仕事は労働ではなく、ライフワークになることに気付いた」という。
社会人になってから初めて「これでいい!」と思える仕事に出会えた。 そう感じた時、自分の内面が一段グレードアップしたのを実感できたらしい。 「新しいことに挑戦する自分が好きみたいです」 と照れくさそうに話してくれたのが印象的でした。
20代なら異業種への転職も可能
銀行員の転職先は、証券・保険・投信運用会社といった金融機関を思い浮かべがちですが、実は金融業界以外へ進む方が大半です。
転職エージェントのキャリアコンサルタントによると、元銀行員の8割は異業種への転職を希望している。そして希望先は「これから伸びる業界でやり直したい」という人が多いです。
「そう都合よく転職できるのか?」という疑念をよそに、実際の転職市場で元銀行員は様々な業界で歓迎されています。
そう聞くと「具体的にどんな仕事があるの?」と知りたくなるでしょう。
【銀行員の転職先変化】
上のグラフは、2018年5月12日付の日本経済新聞に掲載された記事から、「2009年と2017年の銀行員の転職先」として紹介されたデータをグラフ化したものです。
ご覧になれば一目瞭然ですが、2009年は約半数が同業種の金融業界への転職でした。それが2017年になると同業種への転職は3割を切ります。コンサルティング業界、建設不動産、人材業幾分野、製造業等の異業種が増えていることが読み取れます。
2020年に入ってからもこのトレンドは続き、現場感覚では大多数が異業種への転職となっています。
若手の銀行員を積極採用する理由
若手の銀行員を積極採用しているのは、コンサル業界やIT業界です。
市場規模が急拡大している業界は、圧倒的に人材が足りず、積極的に中途採用を受け入れます。 ただ、採用したいけど希望スペックに合う人材はほとんどいないのが悩みの種。
そこで注目されているのが、優秀な若手転職希望者。 業界未経験であっても、地頭が良い人なら短期間で知識を吸収してくれるだろうと期待されてます。
いわゆるポテンシャル採用という考え方で、第2新卒や既卒もターゲットになりますが、一番優遇されるのは大企業の社会人経験者。 この条件に20代の銀行員はピッタリ当てはまります。
どうせなら、元銀行員という肩書を最大限活用して好条件の転職先を見つけるべきです。それには実績豊富なキャリアカウンセラーからアドバイスを貰うのがベスト。
自力で転職先を判断するのは無謀です。自分の殻を破ることは出来ません。
銀行員の転職に強い転職相談所
[PR]
元銀行員を手厚くサポートしてくれる転職エージェント。評判が良い理由は、「金融業界への人脈が太い」&「総合人材大手」というバランス感覚。ここに転職相談すると、広い視座で最適なポジションを探してくれます。自分の可能性を広げたい人は、登録してみましょう。
WEB面談ok
業界トップの転職支援サービスなので、情報量は豊富です。ただ知名度が高いので、転職を希望する登録者数も半端ない数です。その中で自分のキャリアプランを真剣に考えてもらう為には、かなりアピールが必要。高スペックな人は受け身でも大丈夫ですが、普通の人はキャリアアドバイザーを振り向かせる為のネタを用意して面談に臨むべきでしょう。
新タイプの転職プラットフォーム
次に紹介する転職支援サイトは、新スタイルの転職メディア。このようなニューメディアを活用して、リクルーティング活動を行っている会社は感度のいい企業ばかり。
面白い会社と出会える確率が上がるので、積極的に登録する事をおススメします。
BIZREACHは、自分のプロフィールを登録しておくと、ヘッドハンター(相談相手)からスカウトが届く新タイプの転職支援サイト。
従来までヘッドハンターとの付き合い方は、良くも悪くもお互いを深く知るウェットな関係にならないと、転職に成功する事はありませんでした。
ところがBIZREACHのプラットフォームを利用すれば、1,800人ものヘッドハンターと接触することができます。もし一度会ってみて「何か違う・・・」と違和感を感じたら、その後の連絡を完全ブロックする事も可能。そしてまた次のヘッドハンターへ相談できるので、このシステムはとても便利です。
「金融業界→事業会社の経営企画への転職」といったキャリアチェンジを目指すなら是非利用してみると良いです。
女性が活躍できる職場のみを扱う会員制転職メディア。
最近の特徴は「金融系」「ネットマーケ系」「メディカル系」に関する女性への求人ニーズが急増しています。一生働ける(=ライフイベントの変化に対応してくれる)柔軟な職場が見つかる可能性が高いです。
このツールを利用した人たちの口コミを紹介。「○○大学卒の○○歳の銀行員が、どのような転職をしたのか具体的に分かった。」「転職前と転職後を知る事ができて面白い。」「簡単な登録だけで適正年収が分かった。」200万人の年収データが公開されているから、年齢・職種・学歴から自分の適正年収を把握できます。
狙い目は新分野・再編業界
元銀行員の転職先として注目されているのは、フィンテック企業・ウェブ系企業・マーケティング企業。 これらの業界は、いままで別々の分野と認識されてきました。ところがこれから先は違います。もう既に業界再編は始まっており、群雄割拠の状態。
具体的な企業名をあげると、サイバーエージェントの事業変遷をたどると分かりやすい。 もともとクリック課金のネット専業広告代理店として創業。その後にアメブロに代表するようなウェブメディアを展開。さらに、ネットからリアルへ逆進出して、金融・放送・出版業まで包括する企業へと変貌を遂げている。
株式会社KADOKAWAもこの分野の注目企業。 もともとは角川出版だけど、今はニコニコ動画を配信するドワンゴと経営統合して、巨大ウェブ系企業へと変貌した。
電通や博報堂もグループ傘下に、アドネットワークを提供するDSP企業を抱える。
いずれも既得権益や従来秩序を破壊しながら、これから誕生する巨大マーケットを狙いにいっている。そのような市場では、スピード・吸収能力・変化への対応力・柔軟な発想ができる人材が求められる。
規制にがんじがらめになって、減点主義で評価が決まる金融業界とは真逆の世界。 挑戦してみる価値はあるでしょう。
もし1回目の転職に失敗したとしても、成長分野で仕事をしていれば再転職のチャンスはいくらでもあります。 絶対に安泰な会社などないので、守るより攻めた方がいいでしょう!
フィンテック企業への転職
銀行員のキャリアコンサル現場でよく耳にするのは、「フィンテック関連企業で良い転職先を紹介して欲しい」という依頼。
チャレンジ精神が旺盛な人が多いので応援したいけど、実際に元銀行員のキャリアを活かせる職場は少ない。 まだ市場創世記である為、今のところエンジニアの求人のみです。
とはいえ今後この手の分野が伸びてくることは確実。フィンテック関連ビジネスをウォッチして、転職タイミングを測って準備をしておくのが賢明でしょう。
基本的な技術動向と銀行機能の代替となるサービスモデルは、銀行員が抑えておくべきフィンテックの動向でまとめています。
【閑散話題】社風を見極めるコツ
銀行員は在職中にうつ病になる人が多い職業といわれている。これは社風というより職場の人間関係に起因することが多く、職場のカラーは支店長の性格が色濃く出る。 宴席が好きな支店長が上司だと、部下はアルコールハラスメントと感じても、上司は飲みニケーションとご満悦だったりするから厄介ですね。
ただどこの銀行も基本的な社風はあり、その社風にそぐわない中間管理職は、閑職へ追いやられるのがお約束事。
- 三菱UFJ銀行
東大・慶応学閥が強くエリート主義。海外案件をやりたい人に門戸が開かれている。
- 三井住友銀行
大阪商人の血を引く住友系が牛耳っている体育会系。メガバンクの中で一番ノルマがきつい。
- みずほ銀行
統合前の派閥がいまだに残っていて風通しが悪い。組織も官僚的。
- りそな銀行
メガバンクに入れなかった人たちの吹きだまり。メガへの劣等感と地銀に対する優越感でモヤモヤしている。
- 横浜銀行
神奈川県以外では通用しないのに、地銀の雄というプライドが高い。
- 千葉銀行
前例主義で新しい事には挑戦しない保守的な社風。優秀な人材は20代で去っていく。
「会社の体質は納得できないけど尊敬できる上司のために頑張る」というのは、苦労が多い割には得るものは少ない。 社風を見極めるヒントは、昇進スピードが早い人の性格を分析する事です。
「捨てられる銀行」
今や銀行マンならば必読の書となっている一冊の本をご存知ですか? 池井戸潤の小説ではなくて、「捨てられる銀行 (講談社現代新書)」です。
この本が注目された理由は、金融庁が方針転換していった背景と今後の方向性が記載されているから。 かなり大胆に本の内容を3行でまとめます。
①担保主義・保証協会ありきの融資はNG。
②各行の目利き力で融資する体制づくりを推奨。
③目利き力とは、決算書では評価できない定性評価(ビジョン・地域貢献・経営者)で融資する事。
確かに正論です。
過去何十年の銀行業務は、金融検査マニュアル重視の体制でやってきたのが現実です。
ただ問題はここから。
金融庁の方針転換には目を覚まされたが、もっとびっくりしたのは各銀行幹部の言動。
彼等は一夜にして金融庁の新意見を丸呑みして、事業性融資件数をノルマに設定して営業最前線へプレッシャーをかけ始めたのです。
現場サイドからすると、中小企業円滑化法の影響がまだ残っているのに事業性評価なんて全然無理・・・。 それなのに、稟議書には定性評価シートの添付が必須となり、毎月モニタリングも始まりました。 「事業性評価融資の増加」=「営業最前線の事務作業が急膨張」という図式。
それと同時進行で働き方改革も始まり、残業管理が厳しくなる一方。もう、上司に見つからないように仕事をするしかありません。 なぜ一生懸命働いているのに、コソコソしなければならないのか? 「行き場のない怒りしかこみ上げてこない」と吐き捨てた銀行員の苦悩した表情が印象的でした。
営業最前線へ強烈なプレッシャーをかける幹部だって人間です。
内心では金融庁への反発心があるだろうけど、そんな事を言ってられない事情があるのです。
それは金融庁から金融仲介機能のベンチマークの公表を迫られたから。
ちなみにベンチマークは55項目あり、「捨てられる銀行 (講談社現代新書)」に書かれている内容と合致します。
「〇〇銀行 金融仲介機能のベンチマーク」と検索すれば、誰でも各行のベンチマークを閲覧できるので、銀行幹部としてはその新ルールを無視することは出来ません。
こうして誰もが腹に一物を抱えて、理不尽な状況に苛立っているというのが銀行業界の現状でしょう。