IT業界の企業は、華やかで先進的なイメージがある一方で、ハードな労働環境でもあります。転職希望者を積極採用している楽天とサイバーエージェントを比較して、IT業界への転職について考えてみました。
楽天とサイバーエージェントを比較
楽天 | サイバーエージェント | |
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コア事業 | 楽天市場のEコマース事業を核としながら、金融(フィンテック事業)へ軸足をシフトしようとしている。 |
イメージ的にはAmebaやゲーム事業の露出が目立つが、コア事業はネット広告代理事業。 |
従業員数 | 5,487名(2016年) |
1,663名(2016年) |
平均年齢 | 33.3歳(2016年) |
31.1歳(2016年) |
平均年収 | 671万円(2016年) |
772万円(2016年) |
ワンマン度 | 三木谷王国と言われるほど、三木谷社長の影響力はかなり強い。社員に対して高圧的な発言も多く、あまり好かれている印象はない。 |
対外的にみて藤田社長は自らのブランディングに成功している為、入社してくる社員も社長を尊敬している人が多い。 取締役の任期を2年と定め、トップ組織が硬直化しない仕組みを作り上げている。尚、藤田社長の株主比率は20.4%。 |
社風 | 全社的には体育会系の営業会社という社風。上司からのトップダウンで目標を言い渡されることが多く、プロセスの数値管理も厳しい。 入社条件をTOEIC800点以上として社内公用語を英語としている。外国人社員も多い為、グローバル環境で働きたい人に向いている。 |
CA女子(顔採用)に代表されるようにチャラい部分がある。飲み会や休日のイベント活動も多い。この営業的ノリを楽しめるかどうかで居心地は変わる。 ネットで流行り始めたサービスは、とりあえず自社でもやってみるという社風がある。(ほとんどが後追い) |
勤務時間 | 営業系(ECコンサルタント)の勤務時間は長いけど、残業代は全て支給される。ただリーダーに昇進すると裁量労働制に変わり残業代が付かなくなるので、実質的に年収が下がる事が多い。 |
全社的に勤務時間は長い。 |
福利厚生 | 楽天クリムゾンハウス(本社)のカフェテリアは3食無料、フィットネスクラブやクリーニング施設もあり、社員が何不自由なく仕事に専念できる環境が整えられている。 |
会社から2駅以内の賃貸物件に住めば3万円の家賃補助。 |
女性支援 | 楽天グループで働く社員専用の社内託児所(楽天ゴールデンキッズ)が併設され、産休明けの社員には時短勤務も認められている。ただしパフォーマンス評価はフルタイム勤務者と同一。時短勤務だから楽に働けるという職場ではない。 |
マカロンパッケージ(生理休暇・妊活休暇・妊活コンシェルジェ・在宅勤務・保育園補助)が用意されている。20代女性社員のリクエストから誕生した制度で、過度なフェミニズムと考えている社員もいる。 |
研修制度 | eラーニングで色々学べる環境は用意されている。ただ日常業務が忙しすぎて学ぶ時間を確保できないのが実態。 楽天カードを勧誘する為の研修には強制的に参加させられ、その後は獲得枚数ノルマを与えられる為、社員からの評判は非常に悪い。 |
新卒入社時以外にまともな研修制度はない。OJTが中心で先輩から仕事を奪えという姿勢。 |
昇進制度 | 若い時にガムシャラに働いて結果を出せば、その見返りとしてポストを用意してくれる会社。成績優秀であれば30代前半で部長に昇進する事も可能で、年収1000万円を超える。 ただその上のポストを目指すのは厳しい。上層部に近づく程、外部から専門スキルを持った傭兵がスカウトされてくるので、ガラスの天井は意外と近い。 |
実力主義が徹底されていて、20代で取締役や子会社社長に抜擢されることもある。自ら手を上げればチャンスを与えてもらいやすい環境。 その反面で事業の統廃合&方針転換が激しい為、犠牲になる社員も多数いる。降格人事も多い為、家族持ちだと生活が安定しないという不安な面もある。 |
※上記2社の従業員数・平均年齢・平均年収は、会社四季報からデータを抜粋して当サイトで作成した比較資料です。
理想と現実のギャップが激しい
IT企業には先進的で華やかな印象があります。 社長もメディア露出が盛んで、世間では成功者として評価されていたりします。 でも、実際の仕事内容は結構泥臭いです。
楽天のコアビジネスは楽天市場。 これはあまりイケてない中小企業のeコマースをお手伝いする仕事。ECコンサルタントという格好いい肩書がついていても、実際にはタウンページに掲載されている商店へ片っ端からテレアポかけて、楽天市場への出店を促すのが一番大事な仕事です。
サイバーエージェントにしても同じ。 派手なメディア事業はそれほど儲かってなく、ビジネスの本流は広告代理店。朝から晩まで広告主を探す為に、ベタなローラー作戦で法人営業をしており、まさに靴底をすり減らして稼ぐ体力勝負の営業スタイルです。
この2社を目指す人は、会社が対外的に発信しているイメージ戦略と日常業務のギャップをしっかり把握しておくべきです。 自社のブランディングに力を入れている会社へ入社する時の最重要注意事項ともいえるでしょう。 理想と現実のギャップは、そのまま離職率の高さへと直結します。
良い会社なのに離職率が高い理由
会社は成長している、給与水準は悪くない、福利厚生も整っている。 「それなのに何故、この2社は離職率が高いのか?」を考えておく必要はあるでしょう。
- 原因① 専門家
優秀なエンジニア・M&Aを得意とする財務担当・IPO請負人など・・・ プロジェクト単位で目的を達成したら次の会社へ転職していくプロフェッショナルはいる。ただ稀少性が高いプロフェッショナルが離職率へ与える影響はごくわずかなので、他の原因も考えていきましょう。 - 原因② 理想と現実のギャップ
華やかなイメージと現実の仕事内容に戸惑うケース。企業研究が不足しがちな新卒に多いのですが、青い鳥症候群の中途採用組にもこの傾向はみられます。面接で実務内容の詳細を確認しないと職歴に傷が付くだけになってしまう。 - 原因③ モチベーションを維持できなくなる
急成長中の会社は社員に対して、常に高いモチベーションを求めます。会社方針に共感できている時は良いけど、距離感を感じ始めると会社の要求が強いストレスとなります。ズレた方向へ全力疾走することはとても難しいから。 - 原因④ セカンドキャリアを描きずらい
働いている社員の大半が20~30代と若くて、ロールモデルとなる先輩が社内にいない。仕事より家庭を優先させる生き方や、一時的にでもダウンシフトすることが許される空気感がない。
ひねくれた視点で楽天とサイバーエージェントを見てみると、実はこの2社で仕事をする上でそれほど特別な頭脳は必要とされてません。 少し言葉は悪いですが、体力のある野心的な馬鹿ぐらいがちょうどいい。 お手本はリクルートです。
- 若い人が評価されやすい仕組みを作る
- ガムシャラに働く20代独身者を支援する福利厚生を用意する
- 体力が落ちてきたら退職というカルチャーを作る
働き方に関しては、今後変わる可能性は十分あります。 ただ表面ルールは変わっても、根本的な企業DNA(今の社風)は変わりません。 変えたら他社との競争に負けちゃいますから。
それを理解したうえで、転職先候補とするか決めるのが良いでしょう。
- 会社と自分の成長ベクトルが同じならOK
- 対外的な業績評価と働きやすさは必ずしも一致しない
- ロールモデル不在でセカンドキャリアを描きずらい
- 離職率は高い