退職理由を聞かれた時に、「上司のパワハラが原因です」と答えるのは控えたほうが良いです。その理由を説明します。
「退職理由はパワハラ」と答えてはダメ
転職面接で、「前職の退職理由はパワハラでした」と回答するのはNGです。なぜならば、面接官の脳裏には潜在的に次のような人物像がパッと思い浮かんでしまうからです。
- 忍耐力がない人
- 人間関係でトラブった人
- 問題が発生すると他者に責任を求める人
いや、そうではない。「本当にひどかったんだ」「メチャクチャ理不尽なパワハラを受けていたんだから」「信じてくださいよ」と言いたい気持ちは分かります。
でもそれを客観的に証明するのはすごく難しい。パワハラ加害者の人物像、さらには自分の背後関係を事細かに説明する必要があります。初対面の面接官の同情を引き、納得させるだけのストーリーを構築するのは至難の業でしょう。それだったらパワハラで辞めた事には一切触れないほうが無難です。
もう一つの理由は、パワハラはどこの企業でも潜在的に存在する問題だからです。
東芝のパワハラ問題に対して、経営者の本音がチラリ
近年騒がれた有名なパワハラ事例といえば、東芝の「チャレンジ」。東芝の資材調達部門の課長が語ったパワハラの一例を紹介します。
課長が期初の目標数字を掲げると、部長から「チャレンジ」と称して勝手に数字を上積み。カンパニー長が出席する全体会議で、チャレンジ分を含めた目標数字を課長が発表。つまりかなり下駄をはかせた数字が、目標数字として記録される。
その後、月次目標の未達が続くと、部長が課長を激しく叱責して挽回策を強要。何度も施策を繰り出しても目標数字には届かず、現場は疲弊し職場の雰囲気は悪化。
部長は課長に対して「自分で目標数字を全体会議で発表したんだろ!数字の責任をとれ」と突き放す。
たまたま東芝の業績が大幅に悪化して、「倒産」の2文字がよぎるようになったことで、東芝のパワハラが世の中に知れ渡るようになりました。しかも一部の過激な上司がパワハラを行っていただけでなく、組織的だったことが明るみになっています。
東芝といえば、経団連会長を2人も輩出した日本を代表する企業。その東芝が「実はパワハラだらけのブラック企業だった」というしょっぱい現実です。
世間の反応は「ひどい」「名門企業とは言えない」という批判的な意見が大半でした。
ところが一部には「目標の上積みは当たり前だ」「昔はもっと頑張っていた」「軟弱な事をいっていたらグローバルで戦えない」というパワハラ擁護派とも聞こえる声が少なからずあったことは事実です。
後者の発言はビジネス誌の名物経営者のコラムでもチラホラ拝見します。これが経営陣の本音なのかもしれません。
トップダウン型企業でパワハラはおきやすい
経営者が心の中で社内のパワハラを容認してしまっているのは、末端社員にまで自らの意思を共有させたいから。それには、恐怖政治を思わせるような軍隊型が望ましかったりします。軍隊の隊長は上官に忠誠を誓い、部下には絶対服従を強いるので、自分だけでなく他人にも厳しく接する事が求められます。
でも実は、他人に対して厳しく接することが出来る人は少数派。一般的な感覚を有している人には、他人を攻撃して余計な軋轢を生みたくないという「事なかれ主義」が日本社会に蔓延しています。
だから自分にも他人にも厳しくできる人というのは、経営者にとって貴重な存在。社内で嫌われているのにトントン拍子で出世していく人がいる会社では、経営者が軍隊型組織を望んでいると思って間違いありません。
特に製造業は社員数・関連会社が多岐にわたるので、ピラミッド型の階層組織にせざるを得ない宿命にあります。東芝だけが特別ではないと思っていたほうが良いでしょう。
退職理由は志望動機とセットにする
誰が何といおうともパワハラ行為は改めるべき行為です。
ただ実態としては、どこの企業でもパワハラにあう可能性は内在しているという認識をしておいたほうが良いでしょう。それが現実です。
だから前職の退職理由をパワハラと伝えるのは得策ではありません。退職理由がセクハラというのも同じ理屈で駄目です。
それでは「退職理由を聞かれた時にどうしたらいいんだ?」という声が聞こえそうです。模範解答は、転職先への志望動機を述べて、「それを実現する為に前職を辞めた」と伝えるのが理想です。前職が嫌になって辞めたのではなく、さらなるステップアップを求めて転職に踏み切った事を面接官へ示唆出来ればOKです。
面接でありのまま正直に話すというやり方もあるでしょう。全てを分かった上でやるのであればOKですが、世間知らずな為に地雷を踏んでしまうのは、時間と労力の無駄ですよね。面接ごとに想定問答集を作成してくれる転職相談先もある世の中です。便利なものは利用してみたほうが良いでしょう。転職相談所の使い方について詳しく説明しています。
- ネガティブな退職理由はNG
- どんな組織でもパワハラの芽を内包している
- 対人関係で失敗した人は好まれない
- 客観的判断が難しい人間関係(パワハラ・セクハラ)の話題は避けるのが吉