生命保険会社の歴史を振り返り、今後の業界未来像を推測してみました。

乗合代理店の時代が到来?

保険内容の説明

「保険は比較して選ぶもの」というのが当たり前になってきたけど、ユーザーが自力で保険内容の優劣まで評価するのは難しい。 出来れば誰かに頼りたい。

そんな時に重宝するのが、

比較サイト
保険ショップ(乗合代理店)

まずは比較サイトを周回。 候補となりそうな保険商品は見つかるが、オンラインだけで最終決断するのは不安。 誰かに背中を押して欲しくて、保険ショップへ相談に行くという流れが出来上がっている。

このような経路をたどって訪れてくる客の成約率は高いという。 2016年時点の統計では、全体の約10%が保険ショップで契約が締結されている。

営業職の転職が相次ぐ

ユーザー動向が保険ショップに集中しだしたのだから、営業マンも変わる必要がある。

転職だけでなく、独立開業したり、複数の代理店が合併するケースもありました。 顧客獲得競争に疲弊した1社専属の営業マンは、次々と保険ショップへ引き寄せられていく流れ。

「給料はそこそこでも安定した仕事を得たい。」 これが本音。

こうして顧客獲得の主戦場は保険ショップが中心となり、資本力のあるニトリ、イオン、セブン&アイが追随してこの動きは一層加速した。

儲け第一主義だとバレた

ところが、徐々に保険ショップの実態が暴かれていった。 実はお客さん側から見た保険ショップの役割を見事に裏切っていた。

【客が期待する事】
複数企業を比較して、公平な目線で最適なプランを紹介してもらいたい。

【保険ショップの営業方針】
紹介料率が高い保険会社の保険商品を顧客へ勧めていた。
さらにキックバックキャンペーンがあれば、最優先でプッシュする。

業界関係者は、良心の呵責に悩まされながらも・・・儲かるから止められないという状態が10年ぐらい続いた。

保険ショップの収益源は、保険会社から受け取る手数料。 その手数料の取り決め一例を紹介しよう。

■■■ 契約内容 ■■■
契約者年齢:30歳
商品内容:終身医療保険(60歳払込満了)

■■■ 取決め手数料率 ■■■
初年度:契約金額の40%
次年度以降:契約金額の10%

通常の手数料率はこのような状況なのだが・・・。 販売額が一定基準を上回ると手数料率がグンと跳ね上がる仕組みになっている。

例えば40%だった契約手数料率が、60%に跳ね上がるという事はザラ。 タイミングによっては100%という事もある。

これでは保険ショップが中立を維持できるわけがなく、どうしても高額なキックバックが手元に入る保険商品を顧客に勧めてしまう。 この構図は携帯ショップの商戦と似ている。

金融庁からにらまれる

この状態を放置することが出来ずに、さすがに金融庁がメスを入れた。

第一弾は委託型募集人制度に対する規制。
これは完全歩合の営業が、保険ショップの軒先を借りて営業活動をしていた事に対する規制。

第二弾は保険業法の改正。
これによって年間の手数料が10億円以上ある代理店の負担は一気に増した。
一番きつい内容は、事業報告書の提出義務。
取り扱い保険会社の商品別契約件数、受取手数料をガラス張りにして、顧客からのヒアリング内容~契約過程までつぶさに記録しなければならなくなった。

これを守らなければ行政処分というきついお仕置きが待っている。

乗合代理店への転職意欲は旺盛

これらの連続規制で、多くの代理店で売上ダウン。 人件費やシステム投資への負担に耐え切れず、早々に撤退を表明した会社もありました。 いずれも消費者の意向を軽視した販売活動を堂々と行っていた倫理観に欠ける面々なので、同情の余地はありません。

ただ、淘汰が始まっていると言えども・・・。 まだまだ乗合代理店にはフォローの風が吹き続けているので、市場シェアを伸ばす業態であることは間違いありません。

これから1社専属営業から乗合代理店への転職を検討している人への注意点。

  1. 給料や条件は二の次
  2. 会社の体質を見抜く眼力が必要
  3. 消費者を軽視した営業方針は続かない

会社の体質を見抜く為の質問。
「店頭で顧客と打ち合わせした内容の記録方法や管理体制」を面接で聞いてみると良いです。

この質問ならば角は立ちません。
しっかりした回答がなければ、「改正保険業法を守る気はない」という事が分かります。

今回のまとめ
  • 乗合代理店は収益を上げている
  • 優秀な営業が吸い寄せられている
  • 一部の代理店に倫理的な問題点がある
  • 選別眼が必要